ブログ

冷え症・起立性調節障害に「トリカブト」

カテゴリ:なつめ通信

小さい頃、NHKのモノクロで「華岡青洲の妻」の映画をよくやっていて、幼いながらに怖い話だなと思いながら見ていました。

 

 

 

今思えば若尾文子主演の映画なのですが、最近では10年以上前にNHKのドラマで谷原章介さんと和久井映見さん、田中好子さん主演でやっていました。

 

 

 

江戸時代に乳がん手術を世界で初めて麻酔を使って行うまでの話で、「通仙散」という麻酔薬を開発するため妻と実母に人体実験しながら量を加減していくのですが、その過程で母は亡くなり妻は失明させてしまうという物語です。医学的な題材としてエーテルが見つかる40年以上も前に麻酔を成功させたという物語としても面白いですし、嫁と姑の確執というテーマで観ても面白い作品です。

 

 

 

この麻酔薬「通仙散」にチョウセンアサガオ(曼荼羅華)とトリカブトが使われています。日本麻酔科学会のマークにチョウセンアサガオの花が使われているのは華岡青洲が開発したこの通仙散のチョウセンアサガオに由来しているそうです。

 

 

通仙散のもう一つの主成分トリカブトは名前は聞かれたことがあると思います。有毒植物で根が漢方薬として使われています。主根を烏頭(うず)、子根を附子(ぶし)といって熱処理などをすることによって無毒化して用います。

 

 

特に附子は烏頭と比べて薬効が比較的穏やかなので数多くの処方に使われています。有名なところでは麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)、八味地黄丸、牛車腎気丸、四逆湯、真武湯、附子理中湯などたくさんあります。附子は体を温めてくれる生薬で散寒薬(さんかんやく)と言って、冷えをすぐにとってくれるファーストチョイスの生薬です。2番目に有名な寒さをとってくれる生薬は乾姜(かんきょう)でいわゆる生姜を蒸して乾燥させたものです。

 

 

日頃のご相談いただく中で感じるのは8月や9月のこの暑い最中にもかかわらず、附子や乾姜を使うような体の冷えたタイプの方が多くいらっしゃるという事です。クーラーや冷たい飲み物も関係しているのかもしれません。

 

 

夏休みの期間中、数多くご相談いただいたのが中高生の起立性調節障害です。朝起きれない、頭痛がする、めまい、立ち眩み、しんどくて学校に行けないというお悩みです。朝スッキリ起きられないという方に多いのがこの冷えているタイプです。夜寝ている間は血流が一番悪くなる時間帯なので朝起きたての体は一日の中で一番冷えています。体が冷えると血液の流れが悪くなります。血液も含め体の水分は冷えると動きが悪くなります。

 

 

水を冷やせば氷になり固まりますし、水を温めていけばグツグツと沸騰して動きが活発になり最後には蒸気となります。人間の体の水の流れも一緒で冷えると水の代謝が悪くなり浮腫みやすくなったり、水が出ていかないので下痢や軟便傾向になります。尿もしっかり出なくなる傾向になります。

 

 

このようなタイプの方には温陽利水(おんようりすい)といって体を温めあげながら水分代謝をよくしてあげます。そうすることで体を温め余分な水を体の外に出してあげるので浮腫みがとれて、軟便や下痢だった便が固まりやすくなります。また余分な水分が抜けていくので体の重だるさがなくなりますし、めまいや立ち眩みといった過剰な水分が引き起こす症状も楽になっていきます。

 

 

冷えの自覚のある方にはもちろんおすすめですが、舌を見ると特徴的で歯型がくっきり付いてギザギザになっている方や、白く厚い苔がびっしりと付いている方などは附子を少し入れてあげると水の流れが良くなって自覚症状が楽になります。

 

 

これから少しずつ寒くなってきますので附子製剤をうまく取り入れたり、生姜を食事に取り入れたり体を冷やさないようにして寒い季節を乗り切りましょう。